グループ②文献講読

中学校数学の総合教育と<課題学習> 監修 横地 清                   平成2年9月初版刊

1.「総合教育」から「課題学習」へ

① 中学生とユークリッド

中学生はユークリッドの名前を知らない。

2年生の算数教科書の「数学のひろば」というページにユークリッド(Euclid)と「幾何原論」が紹介されている為、2年生以上の学年において、その名前すら知らない事実は数学教育において由々しき事態と言わねばならない。

このような事態を前にして、従来のような数学を受験の為の技能や実用的な技術の手段に閉じ込めたり、その範囲内で教育するような態度はやめて、数学を人類の生活や文化の発展として結びつけた教育をしたい。

・ユークリッド(Eukleides)

    エウクレイデス…ギリシャ読み

紀元前3世紀前半に活躍した数学者・物理学者

・幾何原論(ユークリッド原論)

「原論」は、19世紀末〜20世紀初頭まで数学(特に幾何学)の教科書として使われていた。

原論では、平面・立体幾何学、整数論、無理数論などの当時の数学が公理的方法によって組み立てられている。

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https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/29/a21c5def699352233381f3b1466423b0.jpg

名前・・・ラファエロ・サンティ

生没年・・・1483年4月6日 – 1520年4月6日

出身地・・・ウルビーノ

活躍した地域・・・フィレンツェやローマ

作風・・・盛期ルネサンス

パトロン・・・教皇などの重役

家族・・・独身。父親が宮廷専属の画家だった

http://gemeinwohl.jp/wp-content/uploads/2019/06/1024px-_The_School_of_Athens__by_Raffaello_Sanzio_da_Urbino-1-768×596.jpg ラファエロ(Sanzio Raffaello) 「アテネの学園」「アテネの学堂」(1509-1510),バチカン博物館

ラファエロの名声を不動のものにしたフレスコ画である。50人を超す哲学者が描かれている。一点透視図法、つまり遠近法が用いられており、自然と視線が中央に引き込まれる。そして、右下でコンパスを扱っている人がユークリッドである。ユークリッドの周りにいる生徒に定理を説明している様子とも言われている。

※フレスコ・・・塗りたての漆喰の上に水彩で描いた絵。西洋の古い壁画に用いられた。フレスコ画法。(新解明国語辞典)

② 将来教師となる学生とユークリッド

著者は、「日本の数学教育では、数学は受験のための手段や、実用的な技術の手段として教えられ、人類が数学を生み出してきた文化的な意義は論外とされている」と記していた。

実際に大学で「ユークリッドについて知っていることがあれば、重要と思う順に書きなさい」と質問をした。

結果 全受講生76名 

「名前を知らない」「どこかで名前は聞いたみたい」と答えた学生が43名 (57%)

「昔の数学者と思う」「昔の幾何学者と思う」と答えた」学生が29名 (38%)

「幾何原論」に言及した学生は僅か4名 (5%)                

であった。先程、著者が日本の数学教育について記したことは、以上の結果の事実が証拠となっている。

③ 「生きた数学」「文化と数学」/「総合教育」を大切に

著者は、従来のように、数学を受験のための技能、実用的な技術の手段や、その範囲内で教育するような態度はやめて、数学を人類の生活や文化の発展と結びつけて教育をしたいと記す。その方針にしたがい、中学校の数学教育に次の3つを提案している。

(1) 「数学それ自身」:従来通り、生徒に数学それ自身の学力をつけたい。

(2) 「生きた数学」:生徒の現在の生活ならびに将来の生活を、生き甲斐のあるものとする数学を指導したい。

(3)「文化と数学」:人類の育てる文化の一環として数学を指導したい。

(2),(3)は新しい提案であるため、以下に事例を挙げる。

 (2)の事例:カードの使い方、社会調査、速度と加速度、地球儀の幾何

 (3)の事例:太陽光線の幾何、ルネッサンスの絵画、力学と数学、世界の模様

指導方法

 1.各学年とも、年間、「生きた数学」から2テーマ、「文化と数学」から2テーマをそれぞれ選んで指導する。

 2.各テーマの指導時間は3~5時間とする。

 3.各テーマの教育内容の構成には各教師の研究と個性を生かす。

 4.各テーマとも数学的内容に重点を置いた上、各テーマの意図に見合って、理科、社会、国語、美術など各教科の内容を含めて、総合的に展開する。

著者は、特に4.の方針を大切にしている。そして、「生きた数学」「文化と数学」=「総合教育」と呼んでいる。

④ 「総合教育」から「課題教育」へ

著者は「総合教育」の重要性を訴えても、正直、従来の中学校では、実現が極めて困難であると述べている。しかし、1989年の学習指導要領では、「課題学習」が導入された。

1989年学習指導要領「課題学習」

第3節 数学:文部科学省 (mext.go.jp) (第3 指導計画の作成と内容の取扱い 2より)

この「課題学習」の意味は、「総合教育」に近いものを持っている。そこで著者は、「課題学習」を発展的に考えて、③の(2),(3)を実施したいと考えており、その実施にあたっての注意点を記している。

① 学習指導要領の「課題学習」は2学年、3学年を中心に考えられているが、著者は、1年生にも及ばしたいと考えている。

② 「課題学習」は、取り立てて、「生きた数学」や「文化と数学」の意義まで及んでいないが、著者は、これらの意義を大切にしたい。

③ 著者の研究仲間が、既に「総合教育」として実践してきた経験や成果をできるだけ生かしたい。

著者の調査から日本数学教育の課題が浮き彫りになった。そして、「課題教育」についてまとめた。次回は、「課題学習」を構成するための資料について記していく。

引用・参考文献

https://sendatakayuki.web.fc2.com/etc6/syohyou426.html

・ラファエロの『アテネの学堂』を解説~一点透視図法と吸引力

ラファエロの『アテネの学堂』を解説~一点透視図法と吸引力 | 世界の美術館ガイド (gemeinwohl.jp)

・「きらりの旅日記」

ヴァチカン美術館 ラファエッロの間 署名の間 アテネの学堂 エウクレイデス・・・とは? | 「きらりの旅日記」 – 楽天ブログ (rakuten.co.jp)

・ラファエロはどんな画家?天使や聖母で有名な絵画を分かりやすく解説!

ラファエロはどんな画家?天使や聖母で有名な絵画を分かりやすく解説! | 岡部遼太郎公式ホームページ【アクリルラボ】 (acrylicrab.com)

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