ゼミグループ①文献講読

横地 清・菊池 乙夫 著 「中学校数学+総合学習1 数学を中心のする総合学習の展開」

著者は初めに国立科学博物館での体験を語る。その屋上には水平型日時計、鉛直型日時計、赤道型日時計が設置されている。階段下には水時計とそれの説明もされているが、小中学生は見るだけで終わってしまい関心を示さないことが述べられる。著者は数学が知識材、技能材、受験材としてただけで学習されていることに危機感を示す。

【補足説明】

〇「水平型日時計」→時刻の目盛り板が水平にため、時刻が読み取りやすい。日時計の中で1番多く作られているため、誰にでも分かりやすい。サイズは自由に決めることができ、目で見たり、手で触ったりと学習材として扱いやすいものである。

〇「鉛直型日時計」→建物の壁などに垂直面に取りつけ、高い位置であるのが一般的である。大勢の人が同時に眺めたり、少し遠方からも見ることができる。ヨーロッパでは、教会の塔や会堂の壁に多く作られている。

〇「赤道型日時計」→時刻目盛り板盤が地球の赤道面と平行になっており、コマ型日時計とも呼ばれる。棒の先端は北極星を指し、十二の時刻目盛りは裏表両面に刻まれている。太陽の位置により、春分から秋分は表面に、秋分から春分は裏面にできる影で時刻を表示する。

※赤道型日時計が表面と裏面に影ができるパターンがある理由

春分から秋分(夏)は秋分の日・春分の日よりも太陽が高い位置を通る。反対に、秋分から春分(冬)は太陽が低い位置を通る。これにより、夏は円盤の上側を照らすため影も上側にでき、冬はその逆のことが起こるという仕組みである。

・「水時計」→夜間に使えない日時計を補うものとして、作られた。地域によって様々な形があるが、中国や日本で使われていた水時計は、漏刻と呼ばれていた。

【日時計の仕組みについて】

○日時計とは…時刻の目盛りをつけた平板上に指針を固定し、太陽の光を受けてできる指針の影の位置によって時刻を知るもの。(デジタル大辞泉)

・必ず北向きに円盤の上側が来るように置かれる。
→太陽が南側を通るため、北側に影ができる。
・太陽は東から上り西に沈むので、影はその反対の西側から北側を通り、東側に移っていく。
→これが右回りなので、現在世界中にある時計はすべて右回りになっている。
・「影」が時計の針の役目を果たすため、影ができない条件(夜間、悪天候)では利用できなくなってしまう。

続いて、西欧の日時計について説明します。
・資料から分かること
〇「天使の日時計」はパリから西南100kmのChartre(シャルトル)大聖堂にある。鉛直※1型日時計で、製作年代は1578年まで刻まれている。大聖堂は13世紀の素晴らしいステンドグラスに満ちている。

〈引用資料〉

シャルトル*フランスの世界遺産*美しいステンドグラス (utokazan.jp)

〇「Rotenburg(ローテンブルク)の日時計」はドイツのロマンチック街道に位置するRotenburgという中央広場の正面に高々としたこの日時計がある。

〈引用資料〉

ローテンブルクの仕掛け時計 (uchiyama.info)

〇「Nurnberg(ニュルンベルク)の日時計」はRotenburgという中央広場にある。Rotenburg近郊には中世の大都市Nurnbergがあり、そこは第二次世界大戦で廃墟と化したが、1982年には復興し外観は中世のままの大都市を再現している。

〈引用資料〉

『ミュンヘンから日帰り列車の旅(4)ニュルンベルク』ニュルンベルク(ドイツ)の旅行記・ブログ by Giraudさん【フォートラベル】 (4travel.jp)

〇「Stein am Rhein(シュタイン・アム・ライン)の日時計」はスイスのアルプスを巡りチューリッヒを初めとする近郊の1つであるライン川のほとりの小さな町Stein am Rheinの中央会堂※2にあり、この小都市の中世からの由来を誇っている。

〈引用資料〉

中学校数学+総合学習 1

数学を中心とする総合学習の展開、 2001年11月 初版刊、 発行所:明治図書出版株式会社、著者: 横地 清

これら4つの鉛直型日時計は、歴史ある西欧諸都市の中世からの由来の象徴であり、誇りである。西欧の人達にとって鉛直型日時計は数学を遙かに超えた敬愛すべき歴史的文化財である。

※1:鉛直とは「ある直線が、ある直線・平面に対して垂直であること。」         (引用:コトバンク②より)

※2:会堂とは「集会などに使う目的で建てた大きな建物。」
(引用:デジタル大辞泉より)

〈引用文献〉

中学校数学+総合学習 1

数学を中心とする総合学習の展開、 2001年11月 初版刊、 発行所:明治図書出版株式会社、著者: 横地 清

筆者は中国北京にある国子監を訪れる。そこで発見する赤道型日時計と水時計はずっと昔に発明され、日本に持ち込まれた物であり、これらは数学を超えて敬愛すべき歴史的文化の問題である。

国子監

◯漏刻の水時計について

故宮の日時計

 4つの水槽を使い、水の流れが一定であることを利用したもの。一番下の水槽に浮かべられた矢の浮き沈みによってメモリを読むことで時刻を知ることができる。中国では古くから昼と夜をそれぞれ100に分割した時刻制度が用いられていたため、矢には100のメモリが書かれていた。

漏刻の日時計

 もし、「日時計の数学」を今の数学を教えるのと同じ態度で教えるとどうなるだろうか。ここでいう同じ態度とは、知識材、技能材、受験材としての数学を教えるということである。残念なことに、この態度では人類の歴史的文化と切り離された、血も涙もない「日時計の数学」を教えることになるだろう。

 私どもが本当に生徒に学習させたい数学は、人類が産み、人類が共に生きてきた文化としての数学である。そうした数学を実現できる先生方の育成と共に、文化としての数学の土台ないし基本を生徒に学習させたいものである。


【参考資料】

・セイコーミュージアム/最終閲覧日2021年7月21日

https://museum.seiko.co.jp/collections/timepieces/

・奈良文化材研究所 飛鳥資料館ファン倶楽部/最終閲覧日2021年7月21日 https://www.asukanet.gr.jp/ASUKA4/mizutokei/tokei02.html

・株式会社一粒工芸/最終閲覧日2021年7月21日

https://itiryu.com/kinenhin/hidokei/

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