書評 「大学大崩壊」 木村誠 著

「大学大倒産時代」に続いて購入しました。2018年11月30日初版です。
興味があった所の要点を書いてみます。

定員充足率の厳格化,23区の定員増の凍結によって,地方に受験生が流れるどころか,地方中堅私大の充足率は減少している。

文部科学省が国立大学を競争に駆り立てる要因を,世界大学ランキングの低下と見ている。

また研究力低下の要因は財務省の交付金の削減である。

そのため「選択と集中」によって交付される競争的資金の獲得の対策に,研究時間を割かれている。

「選択と集中」は長期的研究にはマイナス要素であり,任期のない常勤教職員に仕事が回り,時間もなければ,金もないところで世界的に通用する研究論文を期待するのは酷である。

人も研究資金も足りない地方国立大学は限界に来ている。

東大に研究費を集中しても,それに対応した論文数か増えていない。

ちなみに山形大学は,科研費に対して論文が多い大学の上位14位でした。

国立大学のアンブレラ方式もいろいろあり,地域の実情に合わせていろいろなタイプがある。すんなりとうまくいくとは限らない。

この本の特徴は,今挙げたようなことも全てデータを示してあることです。
そのため,説得力があります。

最終的に,財務省がお金を絞り込んだことと,文部科学省の施策がことごとく活きていない事実が浮かび上がってきます。

「国は国立大学の首を絞めながら,地方創生やグローバリズム人材育成,さらに世界に通用する研究水準まで要求しているのだ。疲れ切った国立大学では深く静かに内部崩壊が進行している」
という下りがとても心に残りました。
国立大学の先は,とても暗いとしか思えませんでした…。
現代の大学リアルの最新状況を数字で示している良書だと思います。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です